2025.06.17

太陽光パネルの「負の遺産」にどう向き合うか? – 事業者が今考えるべきこと

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こんにちは。

太陽光発電投資をサポートする株式会社アースコム取締役副社長 丸林綾子です。

 

環境に優しいエネルギーとして普及が進む太陽光発電。あなたの事業も、このクリーンな電力で持続可能な社会に貢献していることでしょう。しかし、パネルの設置から20年、30年が経過した未来を見据えた時、私たちが向き合わなければならない「負の遺産」について、真剣に考えたことはありますか?

 

本日は、その「未来の負の遺産」への備えについて考えてみましょう。

 

 

 

潜むリスク:パネルに含まれる有害物質

太陽光パネルは発電中は環境負荷の低いクリーンエネルギー源ですが、境や人体に有害な物質が含まれている可能性があります。

 

普及が進むCIS/CIGSパネルにはセレンや、特に毒性の強い重金属であるカドミウムが使われていることがあります。また、一般的なシリコン系パネルでも、配線部分の鉛や、ガラス部分のヒ素が含まれているケースも少なくありません。

 

これらの物質は、通常の使用時にはガラスやフレームに封じ込められているため目立ちませんが、台風や地震などで破損した際や、寿命到来による廃棄処理の過程で不適切に取り扱うと、有害物質が雨水に溶け出し土壌・水質汚染を引き起こす恐れがあります。これは、これまで「環境に優しい」とされてきた太陽光発電事業が、一転して環境負荷の原因となってしまうことを意味します。

 

環境保全の観点からも、事業者は設置時から素材情報を把握し、適切な廃棄フローを確立する必要があります。

 

 

 

迫りくる「大量廃棄時代」と事業者の責任

経済産業省の試算によれば、2030年代後半には太陽光パネルの大量廃棄が本格化すると予測されています。あなたの事業で導入したパネルも、いずれはこの「廃棄の波」に直面します。そして、この廃棄には決して少なくないコストがかかります。

 

現在、太陽光パネル1枚あたりの処分費用は、およそ4,000円程度と言われています。例えば、1MW(1,000kW)の太陽光発電設備では、一般的な規模で約4,000枚ものパネルが設置されることがあります。この場合、廃棄費用総額は、約1,600万円(4,000枚 × 4,000円/枚)にも上る可能性があるのです。

 

不法投棄は言語道断ですが、正規のリサイクル業者に委託しても決して安価ではありません。適切な処分フローを怠った場合、企業のCSR(企業の社会的責任)が問われるだけでなく、廃棄物処理法違反による罰則リスクもあります。

将来の大きなリスクとコストを見据え、早期対策が求められます。

太陽光発電

 

 

 

今、事業者が取るべき行動とは?

こうした未来の課題に対し、私たちは手をこまねいているわけにはいきません。

「大量廃棄時代」に到達させない為に、今出来ることは大きく分けて下記の4つとなります。

 

  • 迅速な原因調査と補修作業の実施

サプライヤーへ問い合わせるなどして、導入済みの太陽光パネルに含まれる金属や化学物質を正確に確認しましょう。

 

  • リサイクル費用の積立を計画する

2012年7月以降に認定を受けた事業用設備は義務化されていますが、それ以外の設備についても将来の廃棄コスト(パネル1枚あたり約4,000円/1MWあたり約1,600万円)を想定し、自主的に積立計画を立案し、事業計画に反映させましょう。

 

  • リサイクル技術の動向を注視する

最新の回収・リサイクル技術や各メーカーのプログラムを定期的に調査し、将来の処理オプションを幅広く検討できるようにしましょう。

 

  • 信頼できる専門業者との連携を検討する

パネル回収・リサイクルを専門とする業者を早期に選定し、契約や連携体制を整備することで、リスク低減と効率的な処理フローの構築を目指しましょう。

 

 

 

未来の“負の遺産”を“正”に変える一歩を

太陽光発電は、地球温暖化対策の切り札として、今後もその重要性は増すばかりです。しかし、その持続可能性を真に担保するためには、発電時だけでなく、パネルのライフサイクル全体を見据えた責任ある行動が不可欠です。

 

未来の「負の遺産」を、次世代への「正の遺産」へと転換するために、あなたの事業が今、できることから始めてみましょう!

アースコムではこのようなパネル回収・リサイクルなどのお手伝いを実施しています。ご要望のある方はお気軽にご相談ください。