2021.04.01
ソーラーシェアリングの現状や課題!今後の展望についても解説
こんにちは。株式会社アースコム 代表取締役の丸林です。
現在、国も力を入れている再生可能エネルギー事業。
その中でも、農業と太陽光発電を両立させるソーラーシェアリングは注目を集めています。
ただ、日本でソーラーシェアリングが始まってから歴史が浅いため情報が少なく、現状や課題、将来の展望が見えにくいといった面もあります。
今回は、ソーラーシェアリングに関するそんな話題について解説します。
目次
ソーラーシェアリングとは?その仕組みと利点
ソーラーシェアリングは「営農型太陽光発電」とも呼ばれ、農地に2m以上の支柱を立てて太陽光発電設備を設置し、下部の農地では農業、上部の太陽光パネルで発電を行います。
パネルによって下部農地への日射量が減ってしまいますが、作物によっては日光が当たり過ぎないほうが生育や見た目が良くなるものもあります。
基本的に太陽光発電は経済産業省の管轄ですが、ソーラーシェアリングは農林水産省の管轄。
農業の新しい形と再生可能エネルギーの両立を、国を挙げて目指してるのです。
ソーラーシェアリングは、農家の方にとっては新たに土地を取得することなく太陽光発電に参入でき、農業以外の収入を得ることができるというメリットがあります。
土地に関しては、通常農地に建築物を建てる際には農地転用をし、地目を農地以外に変更する必要がありますが、ソーラーシェアリングでは農地は一時転用扱いとなります。
そのため、地目は農地のままで太陽光発電が行え、土地の固定資産税も上がりません。
農作物は収穫して販売するまで収益が確定しないという不安定さがありますが、発電は毎日行われるため、災害時には非常用電源として活用でき、農機具やビニルハウスなどの設備で自家消費することもできます。
農業収入の不安定さから離れてしまう方が多いことや、後継者が育ちにくいといった課題を抱える日本の農業において、確かな収益が得られるソーラーシェアリングは日本の農業の未来を支える取り組みだと言えるのではないでしょうか。
ソーラーシェアリングの現状と課題を詳しく!
わが国におけるソーラーシェアリングのための農地転用許可件数は、平成30年には1,992件、総面積は560haとなっています。
平成25年にはわずか96件だったことを考えると、ここ数年でのめざましい成長がうかがえます。
ソーラーシェアリングにおける農地転用は、2021年現在では一定の条件を満たす場合は10年に1回、条件を満たさない場合は3年に1回、一時転用許可申請を行います。
申請の条件については「ソーラーシェアリングの申請手続きを詳しく!営農計画書の内容も」で詳しく解説しております。
あわせてご覧ください。
ソーラーシェアリングで作付けされている作物は、農林水産省の発表によると、全国のソーラーシェアリングで見られる農作物の例としては、米、大麦、小麦、大豆、キャベツ、レタス、さつまいも、じゃがいも、さといも、明日葉、小松菜、イチゴ、ブルーベリー、みかん、ニンニク、落花生、大根、人参、茶、梨、牧草などが多いです。
パネルが適度な日陰を生み出し、作物の摘み取り体験が快適に行えるようになった観光農園もあります。
観光農園でなくとも、収穫時に作業者が快適な環境で仕事ができるというメリットは大きいでしょう。
他には、耕作放棄地を利用してソーラーシェアリングを行い地域の農業の再興を目指す例や、ビニルハウスの屋根にパネルを設置して水耕栽培と組み合わせて高収益化を目指す例などもあります。
太陽光発電のおかげで長期間にわたって安定した収入が得られるため、不安定な農業収入によって農業を諦めることなく、従業員用賃貸住宅をつくるなど豊かな福利厚生を整えるケースも出てきています。
ソーラーシェアリングの今後の課題とは
ソーラーシェアリングが広がるにつれ、課題も見えてくるようになってきました。
今、課題とされているのは以下のようなものです。
- 売電収入が得られることによる営農意欲の低下
- 栽培作物の偏り
- ソーラーシェアリング全般に関するデータ不足
- 業者選定の難しさ
- 設備費用が高い
- 一時転用許可のリスク
営農のモチベーション維持は重要な課題です。
安定した売電収入が得られるため、営農が疎かになってしまうケースも見られますが、一定の収穫量がなければソーラーシェアリングの撤退を求められてしまいます。
ソーラーシェアリングは歴史が浅いため、制度自体が知られていないという課題に加え、栽培作物の種類や収穫量、売電収入に関するデータも多くありません。
そのため、新規事業者が安心して参入できる条件とは言い難いのが実状です。
情報不足は工事業者に関しても同じで、通常の太陽光発電所とは工事方法が異なるため「どこに工事を依頼すればいいのかがわからない」という問題があります。
設備費用が多額になることから、少しでも不安をなくして参入ができるような体制作りが求められるでしょう。
一時転用許可も条件を満たせば10年ごとの申請になりますが、書類作成や申請の手間・難しさがあることには変わりありません。
申請の簡略化や期間延長、書類作成の専門家にすぐアクセスできるような仕組みも必要になってくるかもしれません。
ソーラーシェアリングの課題から、今後の展望を考える
ソーラーシェアリングの課題は依然としてあるものの、一般の住宅においても太陽光発電設置数は増えており、ソーラーシェアリングもさらに普及が進むと考えられます。
世界的に脱原発への動きが高まり、国連サミットではSDGs(持続可能な開発目標:2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標)を目指すことが求められています。
また、わが国はエネルギーの面でも農業の面でも海外からの輸入に依存している状態です。
ソーラーシェアリングはこの両面に切り込める手段であることは間違いありません。
日本では平地が少なく、太陽光発電にとって条件の良い土地を探すのが難しいという問題があります。
その点、ソーラーシェアリングなら農地を利用するため日当たりが良い土地が多く、農地を潰す必要もありません。
ソーラーシェアリングは新しい取り組みなので情報量が少なく、設備投資も高額になることから参入に踏み切れないという方も多いことでしょう。
ただ、アジア圏ではすでに多くの国でソーラーシェアリングは行われており、今後も世界的に広がっていくことが予想されます。
日本でも、数十年後は農業の一つの形として定着しているかもしれません。
ソーラーシェアリングは課題もあるが将来への期待が大きい取り組みである
ソーラーシェアリングは農地に太陽光発電設備を備え、農業と発電を両立する仕組みです。
農業と発電のW収益構造で、農業の収入の不安定さを解消できると考えられるでしょう。
現在日本では、ソーラーシェアリングのための農地転用許可申請が約2,000件行われており、毎年右肩上がりで増加傾向です。
栽培されている作物は種類が豊富で、ソーラーシェアリングを利用した豊かな農業環境も築かれています。
ソーラーシェアリングが抱える課題は残っているものの、世界的な流れとしても、日本の農業が抱える問題をとっても、ソーラーシェアリングは今後さらに普及していくと考えられます。
今は「未来の農業の形」と思われている面が強いソーラーシェアリングですが、数十年後には「農業の一つの形」として定着しているかもしれません。
太陽光発電投資をサポートするアースコムでは、福島の耕作放棄地を利用したソーラーシェアリングも行っています。
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