2021.05.11
ソーラーシェアリングの今後は?2021年の現状や課題、展望とは
株式会社アースコム 代表取締役の丸林です。
2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、貿易や人の行き来といった問題だけでなく、私たちの暮らしや生き方、エネルギー、環境問題などについても深く考えさせられる年となりました。
今回は、ソーラーシェアリングの今後の展望について解説いたします。
注目を集めているソーラーシェアリングが、どのように展開していくかという予想や問題点、今後のさらなる普及のために必要なことについてお話してまいります。
目次
ソーラーシェアリングの現状
2020年、当時の安倍首相が、国会答弁においてソーラーシェアリングの普及を後押しすると明言しました。
日本はエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っているという問題があるだけでなく、世界的な目標としてSDGs(持続可能な開発目標)が掲げられる中、国を挙げての脱炭素社会への取り組みは欠かせません。
2018年、FIT制度の制度改正により、10kW以上50kW未満の低圧太陽光発電所には地域要件が設けられ、発電した電力の30%は自家消費することとし、残りの電力を買取に回すという余剰売電となりました。
この制度改正により、低圧太陽光発電所への参入は大幅に減少し、代わりにソーラーシェアリングへの参入が増加するという結果になりました。
その理由として挙げられるのが、ソーラーシェアリングは発電容量にかかわらず全量売電が認められたままだったことです。
いかに国がソーラーシェアリングという制度を保護し、農業の衰退防止とエネルギー資源の確保に力を入れているかが伺えます。
ソーラーシェアリングの問題点と解決策
ソーラーシェアリングは年々増加しているものの、平成30年度の設置件数は1,992件と、全体の数としては多いとは言えない状況です。
ソーラーシェアリング普及の足かせとなっている問題や、ソーラーシェアリングの現状から見えてくる問題点についても見ていきましょう。
①手続きが複雑である
ソーラーシェアリングではソーラーパネルを設置するために支柱を立てますが、その支柱を立てる土地を一時転用する必要があります。
一時転用許可申請に必要な書類は約20種類で、詳細な営農計画書や資金計画書、太陽光発電設備の設計図、日陰でも収穫量が確保できることを示すデータ、知見を有する者の意見書など、一見して理解できないような非常に難しい内容になっています。
<解決策>
以前は一時転用許可申請は3年おきにする必要がありましたが、現在は制度改正により、一定の条件を満たせば10年に延長されました。
今後は申請代行等の専門業者が増え、申請の手間を減らすことができるようになることが予想されています。
②ソーラーシェアリングで育てる作物が偏る
ソーラーシェアリングで育てられている作物は種類も多いのですが「日陰でも育ちやすい作物」が選ばれやすく、作物に偏りが出てしまっています。
ソーラーシェアリングを行うにあたり、栽培していた作物を変更したケースは約70%に達しているというデータもあり、未経験の作物の栽培で十分な収穫量が確保できるのかという懸念も残ります。
<解決策>
ソーラーシェアリングは始まってからの歴史が浅く、データや実績が不足しています。
今後、ソーラーシェアリングの普及によってデータが増えることで、偏りが解消されていくと予想されます。
③営農に支障をきたすケースも少なくない
ソーラーシェアリングでは営農がきちんと行われることが絶対条件です。
収穫量が基準に満たない場合には指導が入り、改善されなければ設備の撤去が命じられます。
②の問題点でも述べたように、ソーラーシェアリングを始めるにあたり、未経験の作物の栽培へと変更する例が多く、経験不足から営農面に支障をきたすことが考えられます。
<解決策>
2021年3月、農林水産省によって、農地から得られる収穫量の基準を撤廃する方針が決定されました。
決まった量の農作物を作る必要がなくなり、農地が適正かつ効率的に利用されているかどうかが新たな基準となります。
ソーラーシェアリングは今後どうなる?普及方法や売電価格まで
ソーラーシェアリングの今後の展望予想は「普及が進む」ことが考えられます。
理由として、以下のようなものがあります。
- 低圧太陽光発電所が余剰売電になった
- 太陽光発電をするのに適した土地が残っていない
- 農業従事者の高齢化などにより耕作放棄地は増加している
- 環境問題に対する意識が向上している
- 電気料金が値上がりしている
- 新規営農者を育てるための新たな農業が求められている
- 一定量の農作物を収穫する要件が撤廃された
一般家庭においても電気料金は年々値上がりしているので、発電した電気を自家消費に回すというのも有効な使い方です。
太陽光発電所が増えてきた現在、発電所を設置するのに適した場所を狭い日本で見つけるのは難しくなってきました。
農地は元々日当たりの良い場所にあるため、太陽光発電を設置するのに適しています。
耕作放棄地の問題もあり、ソーラーシェアリングは農業とエネルギー問題を同時に解決できる可能性を秘めています。
日本では農業収入の不安定さなどから、新規営農者が育ちにくい状況です。
ソーラーシェアリングで長期的に安定した収入が得られる仕組みづくりだけでなく、6次産業化や地域全体の活性化など、新しい農業の形を築いていくことが求められています。
ソーラーシェアリングの売電価格は今後どうなるのか?
FIT制度の固定買取価格は、日本で電気を使うすべての人から集められる再エネ賦課金からまかなっており、再エネ賦課金は年々値上げされているのが現状です。
再エネ賦課金に頼った状態は現在も問題視されており、これに支えられたFIT制度がいつまでも続くのは難しいでしょう。
現在もFIT期間終了後に電力会社と新たな買取価格で契約し、売電を継続できるようになっています。
今後はFIT制度を利用せず、個別に電力会社と契約を結ぶケースも増えていくと予想されます。
ソーラーシェアリングが今後普及するために必要なことは?
ソーラーシェアリングが今後さらに普及していくためには、申請の簡素化や申請代行を行う専門家の増加など、設備導入までの道のりを楽に進めるようにすることが求められます。
そして、ソーラーシェアリングの肝である農業で実績が出るように、サポートしていく体制も必要でしょう。
申請時には営農計画も提出しますが、こちらがしっかりと計画されていれば申請も通りやすくなりますし、始まってからの計画も大きくそれることが無く安心です。
ソーラーシェアリングのメリットも再確認!
ソーラーシェアリングが増加している理由は、メリットも多いからです。
以下は、ソーラーシェアリングのメリットとして挙がるものです。
- 安定した売電収入が長期間得られる
- パネルでほどよく日陰ができ、農作業がはかどる
- 地目が農地のままなので固定資産税が高くならない
- 相性が良い作物であれば収穫量増が期待できる
- 日当たりが良い土地が多いので売電収入が期待できる
- 支柱に監視カメラを設置しやすい
- 耕作放棄地の有効活用が期待できる
ソーラーシェアリングは、現在わが国が抱える農業衰退の問題や、耕作放棄地問題、エネルギーの自給自足問題をカバーしうる存在だと言えそうです。
ソーラーシェアリングの今後の展望は明るい
2020年は、首相がソーラーシェアリング推進を国会答弁で明確に述べるなど、ソーラーシェアリングには追い風となった年でした。
ソーラーシェアリングは毎年増加し続けているものの、申請の煩雑さや栽培作物についての情報不足などの問題点も垣間見えます。
ひとつずつ問題点をクリアにしていくことで、ソーラーシェアリングの普及はさらに進むでしょう。
収穫量確保の基準を撤廃する方針が決定されたことも、課題解決につながることが期待できます。
今後は売電価格が今までの水準通りというわけにはいかないことが予想され、それぞれが個別に電気料金の契約を行うといった方法を取る事業者も出てくると想定されます。
メリットも多いソーラーシェアリング。
日本における農業の問題、エネルギー問題を解決するためには欠かせない存在です。
太陽光発電投資をサポートするアースコムでは、福島の耕作放棄地で榊のソーラーシェアリングを行っています。
どうぞお気軽にご相談ください。