2026.10.19
低圧系統用蓄電池とは?収益の仕組みと投資規模、導入前の確認点

低圧系統用蓄電池は、50kW未満の出力で電力系統に直接つなぎ、電力市場での売買や調整力の提供によって収益を得る事業用の蓄電池です。2026年3月からは低圧でも需給調整市場に参加できるようになり、高圧より小さな投資額で始められる選択肢として注目されています。
ただし収益は太陽光のFITのような固定価格ではなく、市場での運用次第で変わります。この記事では、収益の仕組み、回収期間を左右する要素、導入前の確認点を整理します。
この記事でわかること
- 低圧系統用蓄電池が、どの市場から何に対して収益を得ているのか
- 投資規模の目安と、回収期間を左右する3つの要素
- 提案を受けたときに確認しておきたいポイント
低圧系統用蓄電池とは?50kW未満で電力市場に参加する事業用の蓄電所
低圧系統用蓄電池は、電気事業法上の「蓄電所」にあたる設備です。蓄電所とは、系統から受けた電気を貯めておき、必要なときに同じ電圧・周波数で系統へ送り出す所を指します。発電所や工場の設備の一部として置く蓄電池は「附属設備」として扱われ、蓄電所とは区別されています。
参照元:発電等設備の分割対策に関するQ&A(資源エネルギー庁)
家庭用蓄電池や高圧の蓄電所との違い
家庭用・自家消費用、低圧系統用、高圧系統用の違いは次のとおりです。
| 比較項目 | 家庭用・自家消費用 | 低圧系統用 | 高圧系統用 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 停電への備え、電気代の削減 | 電力市場での運用による収益 | 電力市場での運用による収益 |
| つなぐ先 | 住宅や工場の設備 | 低圧の配電線 | 高圧・特別高圧の系統 |
| 1か所の出力 | 設備の規模による | 原則50kW未満 | MW級の案件もある |
参照元:低圧系統用蓄電所とは―高圧との違いと2026年の制度転換(新電力ネット)
2026年3月から、低圧でも需給調整市場に参加できるように
低圧の蓄電池が事業として成り立つ前提は、2026年3月の制度変更で整いました。それまで需給調整市場の対象外だった低圧リソースが、システム対応の完了した2026年3月13日取引(3月14日実需給分)から、参入要件を満たせば取引できるようになっています。この方針は、2023年8月の国の検討会で整理されたものです。
低圧系統用蓄電池はどうやって稼ぐ?収益は3つの市場の積み上げ
低圧系統用蓄電池の収益は、JEPX(卸電力市場)、需給調整市場、容量市場の3つから得る対価の合計です。市場ごとに、何に対してお金が払われるかが異なります。
JEPX・需給調整市場・容量市場|それぞれ何に対してお金が払われるか
| 市場 | 何に対してお金が払われるか | 取引のしくみ |
|---|---|---|
| JEPX(卸電力市場) | 電気の価格が安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電したときの値差 | 翌日に受け渡す電気を、1日30分×48コマに分けて取引する |
| 需給調整市場 | 需給のずれに備え、出力を調整できる状態で確保されること | 落札した時間帯は待機する。指令を受けて実際に出力を変えた分は別途精算される |
| 容量市場 | 将来の供給力として確保されること | メインオークションは、応札の4年後に供給力を提供できる電源が対象になる |
参照元:取引概要(日本卸電力取引所)、よくあるご質問(電力需給調整力取引所)、参加要件について(電力広域的運営推進機関)
収益のぶれ方も市場ごとに違います。JEPXは日々の価格で値差が動き、需給調整市場は落札できた時間帯の分だけ対価が発生します。容量市場は落札すれば実需給年度の収入が決まりますが、求められた供給力を出せないとペナルティが生じます。
1基では市場に入れない|アグリゲーターが束ねて入札する
需給調整市場の最低入札量は1MW(1,000kW)で、49.5kWの低圧1基では約20分の1にとどまります。そのため、複数の蓄電池を束ねて一つの電源のように扱う「アグリゲーター」が、まとめて入札する形が基本です。市場の取引会員には法人格や純資産1,000万円以上などの条件もあり、個人や小規模な法人が1基で直接取引するのは現実的ではありません。
参照元:低圧系統用蓄電所とは―高圧との違いと2026年の制度転換(新電力ネット)、よくあるご質問(電力需給調整力取引所)
| 担い手 | 主な役割 |
|---|---|
| 設備のオーナー(投資家) | 蓄電池と設置場所を持ち、事業として収益を受け取る |
| アグリゲーター | 複数の蓄電池を束ね、入札・運転の制御・精算を行う |
| 施工・保守の事業者 | 設置工事や定期点検、故障時の対応を担う |
市場で得た対価は、アグリゲーターへの委託費などを差し引いてオーナーに分配されます。収益を見るときは、市場での売上ではなく分配後の金額で考えましょう。市場価格で電気を売る考え方は、太陽光発電のFIP転を扱った記事でも紹介しています。
低圧系統用蓄電池の投資額はいくら?数千万円単位が目安、回収期間は条件次第
低圧系統用蓄電池の投資額は、1案件あたり数千万円単位が目安です。回収期間は一律ではなく、蓄電容量、参入できる市場、運用・保守のコストによって変わります。
投資規模の目安|高圧との比較と手続きの違い
高圧・特別高圧の系統用蓄電池は、MW級になると設備構成によって数億円規模になることがあります。低圧では1案件約2,000万円を標準とするモデルを公表している事業者もありますが、仕様や工事条件で変わるため、業界共通の価格ではありません。
手続きも高圧より簡素です。連系前の事前検討や接続検討の申込みは高圧以上が対象で、低圧は契約申込み後の技術検討を経て連系条件が決まります。
参照元:低圧系統用蓄電所とは―高圧との違いと2026年の制度転換(新電力ネット)、発電等設備の分割対策に関するQ&A(資源エネルギー庁)
回収期間を左右する3つの要素
- 蓄電容量(何時間放電できるか):出力が同じ49.5kWでも、蓄電容量(kWh)が大きいほど長く放電できます。電気の価格が高い時間帯に売れる量が増え、JEPXでの値差収益に差が出ます。
- 参入できる市場の範囲:JEPXだけで運用するか、需給調整市場や容量市場まで組み合わせるかで、収益の積み上げ方が変わります。容量市場のメインオークションは応札の4年後が対象のため、稼働直後から容量市場の収入が入るとは限りません。
- 運用・保守のコスト:アグリゲーターへの委託費、点検・保守費、保険料などが増えるほど、手元に残る金額は減ります。コストが固定費か、売上に連動する変動費かによって、収益が落ちた年の負担も変わります。
導入前に何を確認すべき?提案を受けたときのチェックポイント
提案を受けたら、設置場所、運用体制、収益試算の前提を確認しておくと、事業者ごとの提案を同じ物差しで比べられます。
設置場所の確認|低圧で連系できるか、分割設置に当たらないか
- 低圧で連系できるか:50kW未満でも、接続地点の配電設備の空き容量などによって、連系までの期間や条件が変わります。系統用蓄電池は系統からの充電も行うため、充電側の条件も確認の対象です。
- 分割設置に当たらないか:同じ設置者や同じ地権者が、隣接する土地に複数の設備を設ける計画は「分割設置」と判断される場合があります。2023年4月から、このルールの対象に蓄電用の設備も加わりました。
参照元:低圧系統用蓄電所とは―高圧との違いと2026年の制度転換(新電力ネット)、発電等設備の分割対策に関するQ&A(資源エネルギー庁)
運用体制と試算の確認|保安の担い手と、収益シミュレーションの前提
| 確認したいこと | 確認する理由 |
|---|---|
| 保安の担い手 | 低圧・小規模でも蓄電所は事業用電気工作物にあたり、保安規程の届出や主任技術者の選任が必要になる |
| 収益試算の前提 | どの市場の収入を見込んでいるか、容量市場の収入を稼働初年度から計上していないかで、試算の中身が変わる |
| 保守と故障時の対応 | 点検や故障対応が契約に含まれていないと、想定外の支出が生じる |
参照元:低圧系統用蓄電所とは―高圧との違いと2026年の制度転換(新電力ネット)
土地探しから運用まで任せられる|アースコムの低圧系統用蓄電池パッケージ
高圧には手が届かず、市場での運用や保守を自分で担うのも難しい。そう感じている方に向けて、アースコムでは低圧(49.5kW)の系統用蓄電池を、土地探しから運用・保守までまとめた「低圧系統用蓄電池パッケージ」として提供しています。
手間をかけずに始める|土地選定から申請・工事・AI運用・保守まで一括対応
当社のパッケージでは、次の工程をまとめて代行しています。
- 土地選定
- 各種申請
- 設置工事
- アグリゲーターによるAI自動運用
- 保守・メンテナンス
日常のメンテナンスや設備保険、トラブル対応もカバーしており、主要なコストは売上に連動する変動費型です。専門知識や日々の市場対応がなくても設備のオーナーとして事業を持てて、売上が落ちた年にはコストも下がります。
長く稼ぐための設計|217kWh・約4.36時間の大容量と3つの市場への参入
蓄電池は、49.5kWの出力に対して217kWh、約4.36時間分の容量で設計しています。夕方の需要が高まる時間帯をまたいで放電を続けられる容量です。
運用はAIが24時間自動で行い、需給調整市場・容量市場・JEPXの3つの市場への参入を前提にしています。一つの市場だけに頼らず、複数の市場から収益を積み上げる運用です。
設置場所の条件や見込める収益は、案件ごとに異なります。まずは収益シミュレーション資料で、パッケージの詳細と試算の前提をご確認ください。個別のオンライン相談も受け付けています。
低圧系統用蓄電池パッケージの収益シミュレーション資料請求・個別相談はこちら


