2023.07.14
M&Aで得られる節税効果とは?スキームや注意点も解説!
こんにちは。太陽光発電投資をサポートするアースコムの堀口です。
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」(合併と買収)の略で、企業の合併や買収を意味します。
M&Aには、吸収合併などの企業同士の「合併」と、株式譲渡などの手段で企業や事業を「買収」する方法があります。
近年では、後継者不足の問題から中小企業のM&Aが増えており、状況によっては節税効果が得られることがあります。
今回は、近年のM&Aの状況や節税効果、M&Aのスキームや注意点まで解説します。
目次
近年のM&A事情と節税効果が得られる理由
以前M&Aは敵対的買収など、あまりイメージの良いものではありませんでした。
しかし、近年では企業の規模拡大やシナジー効果を高めるための買収や合併などが行われ、一般的なものになっています。
特に中小企業においては、後継者不足などの問題から事業の存続が難しいこともあり、M&Aが積極的に行われています。
中小企業庁は、このような背景から「事業継承・引継ぎ支援センター」を設置し、親族内だけでなく、第三者への引継ぎについても相談に応じている状況です。
M&Aによる節税効果とは
このように近年拡大しているM&Aですが、買収の状況によっては節税効果もあります。
買収される企業が赤字企業の場合、繰越欠損金は、買収する側の利益と営業利益と相殺するなどの対応ができることがあります。
また、売り手側の企業にとっても、不採算部門を売却し、経営をスリム化するなどのメリットがあるのです。
事業投資とM&Aの違いについては、以下のコラムで解説しています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
事業投資とM&Aの違いとは?投資方法の違いや成功させるポイントも
また、M&Aのスキームの一つである株式譲渡を行い、退職金を活用することでも節税になります。
株式譲渡では対価として現金を受け取れますが、実際に受け取ることができるのは税額を差し引いた分のみです。
対価の一部を役員退職金として受け取れば退職所得控除も利用でき、所得を半分にして計算することも可能になります。
売却価格によっては大きな節税につながるでしょう。
株式譲渡などのM&Aの詳しいスキームについては、次で解説していきます!
節税効果が得られるM&A。そのスキームも解説!
続いて、M&Aのスキームについて解説します。
スキームとはM&Aにおける手法で、代表的なスキームとして以下のものが挙げられます。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 合併
- 会社分割
それぞれ詳しくお伝えしていきます。
株式譲渡
株式譲渡は、売り手が買い手に株式を譲渡することによって経営権を移転するスキームです。
売り手は発行株式の過半数を譲渡することで経営権が移行し、その対価として現金などを手にします。
株式譲渡のメリットとしては、経営権が変わるだけで、会社自体は変更がないことです。
従業員の再雇用などの必要はなく、取引先との関係もそのまま引継ぎができますので、スムーズな移行ができる仕組みです。
支払う退職金は会社の損益(経費)として算入が可能です。そのため、退職金支給後の残金を株式譲渡の対価として支払うことで、譲渡企業の株式譲渡代金は減少し、譲渡企業は法人税の節税効果を期待できます。
また、譲渡企業の創業者の目線で検討する場合、退職金の活用は節税効果があります。前述の通り、退職金は給与や賞与よりも税金が優遇されているからです。
事業譲渡
事業譲渡は、会社の一部または全部の事業を第三者に譲渡するスキームです。
この場合、経営者が売り渡したい一部の事業だけを譲渡することもできますので、不採算部門の切り離しによる経営のスリム化なども可能です。
譲渡する側のメリットとしては会社の経営権が企業に残ることが挙げられます。
受け入れる側としては、同様の事業を買収することにより販路を広げるなどシナジー効果を生み出すことができるのが特徴です。
合併
合併は、複数の会社を一つに統合するスキームで、最も多いのがグループ企業間の組織再編です。
傘下の複数の子会社を合併させて経営の効率化を図ることを目的に行われるなどが考えられます。
買収の場合は、事業の一部や経営権が買収先の会社に移転するだけで法人格は残りますが、合併の場合は、包括的に継承されるため法人格は消滅します。
会社分割
会社分割とは、事業の一部や全部を異なる企業に継承させるスキームです。
不採算部分の切り離しでの企業の立て直しなどの目的で実施されます。
会社分割の場合、対価は支払いのために発行した「新株」を使用することが可能なため、多額の資金を用意しなくても実施できるのがメリットといえます。
M&Aで発生する税金をチェック!
株式譲渡や事業譲渡、会社分割などを行った際、譲渡所得や消費税等さまざまな税金が発生します。
税金の種類や積算方法についても確認していきましょう。
株式譲渡の際にかかる税金
株式譲渡の場合は、売り手側の譲渡所得に対して、法人の場合は法人税、個人の場合は所得税がかかります。
法人税の場合は、営業損失(赤字)であれば株式の譲渡益と相殺されることで、節税効果を得ることが可能です。
売り手側が個人株主の場合、分離課税となり、譲渡所得から取得費や譲渡費用を除いた金額に対して、20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金が発生します。
売り手側が法人の場合、株式の譲渡損益は、本来の事業にかかる損益や特別損出と合算され、法人税率約30%で計算されます。
この場合、株式の譲渡で損出がでても、営業益が出ていれば相殺されるほか、営業損出が出ている場合であれば、株式の損出と相殺できるため、節税対策にすることもできます。
事業譲渡にかかる税金
事業譲渡の場合は、譲渡益にかかる法人税と、譲渡資産の中に消費税課税対象となるものが含まれている場合、消費税も発生します。
法人税については、譲渡する事業について譲渡損益を計算し、売却益に対して課税されます。
譲渡損益は、事業の売却益から譲渡する事業に関わる資産・負債の簿価を差し引いたものとなります。
合併や会社分割にかかる税金
合併や会社分割などの際にかかる税金については、税制適格かどうかで取り扱いが異なります。
税制適格とは、組織再編税制において、組織再編成の前後で経済実態に実質的な変更がないと考えられる「適格組織再編成」と認められた場合については、移転資産の譲渡損益と株式の譲渡損益の繰り延べがされる仕組みです。
一般的には、吸収や分割などの組織編成については、非適格税制とされ課税対象となりますが、一部適格組織再編成と認められる部分がありますので、次項で要件についてもご紹介します。
M&Aの注意点やリスクも確認!
いくつかのM&Aスキームについて解説をしてきましたが、それぞれの節税方法や注意点、リスクについても確認していきましょう。
赤字企業買収の際の注意点
赤字企業を買収する際、自社とのシナジー効果が見込める企業であれば、市場価格よりも安く手に入れることができることで多くのメリットが得られます。
さらに、ご紹介したように節税対策としても吸収される企業の繰越欠損金を引き継ぐことができ、法人税を相殺することなども可能です。
ただしその場合、一定の条件を満たすことが必要なため注意が必要です。
売却する企業が買収する企業と同業者であることや、買収後も買収する企業の既存事業を継続することなどの条件があります。
税制適格を満たす要件
会社の吸収や分割においては、税制適格の要件を満たす場合は税金がかかりません。
税制適格として認められるためには、以下のようないくつかの要件を満たす必要があります。
100%支配関係のあるグループの場合
- 金銭等の授受がないこと
- 組織再編後も100%の支配関係が続くこと
50%超支配関係にあるグループの場合
- 金銭等の授受がないこと
- 組織再編後も50%を超える支配関係が続くこと
- 主要な資産や負債を引き継ぐこと
- おおむね80%の従業員を引き継ぐこと
- 事業を継続すること
共同事業を行うための組織再編の場合
- 金銭等の授受がないこと
- 事業の関連性があること
- 主要な資産や負債を引き継ぐこと
- おおむね80%以上の従業員を引き継ぐこと
- 事業を継続すること
- 事業規模と売上がおおむね5倍以内であること又は双方役員が組織編成後も継続して就任すること
- 支配株主による対価株式の継続保有
海外企業とのM&Aの注意点
M&Aの当事者が海外企業の場合は、特に税務リスクに注意をする必要があります。
海外子会社との取引価格を意図的に操作して、税率が低い海外へ所得を移転することを禁止する「移転価格税制」や租税負担の低い国(タックスヘイブン)にある会社を利用して税金の負担を軽減する行為を規制する「タックスヘイブン対策税制」などに注意が必要です。
意図的な所得移転でなかったとしても、税務調査で追加税負担が発生する可能性があります。
海外企業を買収する場合については、海外の専門家も含めた対応をする必要があるでしょう。
M&Aでの節税効果を得るためには、さまざまな条件の確認を
M&Aには、株式譲渡や事業買収、吸収、分割などさまざまな手法がありますが、それぞれのスキームにおいて、節税効果を高めるためには、事前に条件の確認をする必要があります。
株式譲渡の場合は、個人か法人かによって大きく税率が変わってきます。
また、事業買収の場合は、買収する企業が赤字の場合、条件によっては大きく税額を減らすなどの節税効果が得られます。
合併や分割についても同様に、節税効果が得られる方法がありますが、どの方法についても、さまざまな条件を満たす必要があります。
合併などを進めたものの条件が満たせずに節税効果が得られなかったといったことがないように、事前にM&A専門の税理士や会計士、弁護士などと連携して進めていくべきでしょう。
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