2022.03.09
中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の違いは?手続き方法も確認
こんにちは。太陽光発電投資をサポートするアースコムの石井です。
中小企業の生産力向上のための設備投資を後押しする税制度として「中小企業投資促進税制」と「中小企業経営強化税制」があります。
制度の名前が似ているため、一体どのような違いがあるのかや、どんな事業が対象になるのかが分かりにくいという方も多いでしょう。
今回は、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制について解説。それぞれの制度の対象となる業種や法人、制度が利用できる設備の種類、手続き方法などについて見ていきましょう!
目次
中小企業が設備投資で利用できる税制上の優遇措置とは
中小企業が設備投資をする場合の税制上の優遇措置である「中小企業設備投資税制」は、「中小企業投資促進税制」「中小企業経営強化税制」「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の3つがあります。
このうち、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税は令和3(2021)年度の税制改正で、適用期限が令和4(2022)年度末まで延長されました。
商業・サービス業・農林水産業活性化税制は30%の特別償却または7%の税額控除ができる制度でしたが、令和3年度税制改正により、中小企業投資促進税制に取り込まれる形で廃止となっています。
中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制はいずれも、「中小企業の稼ぐ力の向上」を支援するための制度で、課税対象価額を大幅に減らすことができる「特別償却」、または、設備投資に関する税負担が軽くなる「税額控除」のいずれかを選択できます。
中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の違いは?内容を詳しく確認
中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の条件や対象となる設備投資など内容の違いについて比較しながら見ていきましょう。
制度の適用を受ける条件
2つの制度に共通して対象となるのは以下の条件を満たすものになります。
- 青色申告を行っている
- 中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等)
- 従業員数1,000人以下の個人事業主
「商店街振興組合等」は税制改正により追加されたものになるため、令和3(2021)年4月1日前に取得等をした対象資産について制度の適用を受ける場合には、商店街振興組合は除かれます。
なお、中小企業経営強化税制の適用を受けるためには、中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受ける必要があります。
出資金1億円を超える大規模法人とグループ会社関係にある場合は出資金比率などによって対象から外れることもあります。
対象外となる法人について詳しくは、国税庁の中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制のページをご覧ください。
適用対象となる資産
中小企業投資促進税制
- 機械及び装置(1台160万円以上)
- 測定工具及び検査工具(1台120万以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上)
- 一定のソフトウェア(1つのソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上)
- 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
- 内航船舶(取得価格の75%)
中小企業経営強化税制
中小企業経営強化税制では設備の種類がA類型~D類型の4つに区分されています。いずれの設備も、生産等設備を構成するものである(建物の付属設備や福利厚生施設ではない)こと、国内への投資であること、中古資産・貸付資産でないことが適用条件となっています。
【生産性向上設備(A類型):生産性が旧モデル比平均1%以上向上する設備】
- 機械装置(160万円以上/10年以内)
- 測定工具及び検査工具(30万円以上/5年以内)
- 器具備品(30万円以上/6年以内)
- 建物附属設備(60万円以上/14年以内)
- ソフトウェア(情報収集機能及び分析・指示 機能を有するもの)(70万円以上/5年以内)
【収益力強化設備(B類型):投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備】
- 機械装置(160万円以上)
- 工具(30万円以上)
- 器具備品(30万円以上)
- 建物附属設備(60万円以上)
- ソフトウェア(70万円以上)
【デジタル化設備(C類型):遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする設備】
- 機械装置(160万円以上)
- 工具(30万円以上)
- 器具備品(30万円以上)
- 建物附属設備(60万円以上)
- ソフトウェア(70万円以上)
【経営資源集約化設備(D類型)】
修正ROA(純資産利益率)または有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備
適用対象業種
中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制の2つに共通する対象業種は以下の通りです。
- 製造業
- 建設業
- 農業
- 林業
- 漁業
- 水産養殖業
- 鉱業
- 採石業
- 砂利採取業
- 卸売業
- 道路貨物運送業
- 倉庫業
- 港湾運送業
- ガス業
- 小売業
- 料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業にあっては、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限ります。)
- 一般旅客自動車運送業
- 海洋運輸業
- 沿海運輸業
- 内航船舶貸渡業
- 旅行業
- こん包業
- 郵便業
- 情報通信業
- 損害保険代理業
- 不動産業
- 駐車場業
- 物品賃貸業
- 学術研究
- 専門・技術サービス業
- 宿泊業
- 洗濯・理容・美容・浴場業
- その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)及びサービス業(他に分類されないもの)
※映画業を除く娯楽業、性風俗関連特殊営業に該当する事業は対象外です
なお、令和3(2021)年4月1日前に取得等をした特定機械装置等についてこの制度の適用を受ける場合には、上記の指定事業から「不動産業」「物品賃貸業」「料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業(生活衛生同業組合の組合員が行うものに限ります。)」は除きます。
対象事業年度
適用対象事業年度はいずれも、取得した事業年度内に事業に供することが条件です。取得した年度と業務に使用した年度が異なると適用が受けられません。
また、この事業年度であっても、合併による解散を除く解散の日を含む事業年度および清算中の各事業年度は除きます。
税制措置の内容
中小企業投資促進税制
中小企業における生産性向上等を図るため、一定の設備投資を行った場合に、30%の特別償却または7%の税額控除ができます。
ただし、税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者等に限られます。
中小企業経営強化税制
中小企業の稼ぐ力を向上させる取組を支援するため、中小企業等経営強化法の認定を受けた計画に基づく投資について、即時償却または10%の税額控除のいずれかを適用できます。
ただし、税額控除は資本金3,000万円超の中小企業者等の7%を上限とします。
中小企業経営強化税制は経営力向上計画の認定を受ける必要があるため、適用にはややハードルが高くなるものの、取得した費用をその年に全額経費として計上できる即時償却が可能な点や税額控除率が高い点でメリットが大きいと言えるでしょう。
中小企業投資促進税制・中小企業経営強化税制の手続きの違いもご紹介
中小企業投資促進税制・中小企業経営強化税制の手続きの違いについても確認しておきましょう。
中小企業投資促進税制
確定申告を行い、税制適用を受けます。
確定申告書に必要事項を記載し、税務署に申告することで適用となります。
中小企業経営強化税制
「経営力向上計画」にもとづいた設備計画が必要です。対象となる設備内容によって計画書の提出先が異なります。
優遇措置を受けようとしている事業年度の決算日までに認定を受けている必要があります。
流れとしては、計画認定を受け、事業供用をし、税務申告を行うという手順です。
A類型
工業会等から証明書の受領し、担当省庁へ経営力向上計画を提出
B類型
税理士・公認会計士が計画を事前に確認し、所轄の経済産業局へ確認書発行依頼。担当省庁へ経営力向上計画を提出
C類型
認定経営革新等支援機関が計画を事前に確認し、所轄の経済産業局へ確認書発行依頼。担当省庁へ経営力向上計画を提出
中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の違いは減価償却率と税額控除率
中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制は、いずれも中小企業等の売上向上につながる設備を導入した際に税制優遇が受けられる措置のことです。
いずれも令和3年の税制改正により、適用対象年度が令和4年度末まで延長されました。
2つの制度は、対象は青色申告をする中小企業または個人事業主であることや、対象となる設備は新品であること、取得年度に事業に供する必要があることなど、共通点も多いのが特徴ですが、中小企業経営強化税制は中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受ける必要があるといった違いがあります。
中小企業経営強化税制は認定が必要な分、労力がかかりますが、中小企業投資促進税制が30%の特別償却または7%の税額控除であるのに比べ、即時償却が可能で税額控除も10%と高いことなど大きな節税効果が得られるというメリットがあります。
逆に中小企業投資促進税制は手続きは確定申告のみで良いなど使いやすい制度であるのが特徴です。
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