2023.03.17

ソーシャルインパクトボンドとは?仕組みや意義・事例も解説!

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こんにちは。太陽光発電投資をサポートするアースコムの堀口です。

 

ソーシャルインパクトボンドとは、あまり聞き慣れない言葉ですが、新しい官民連携の仕組みの1つとして拡大している投資手法です。

 

政府や自治体が公共事業を行う際、成果報酬の考え方を導入することにより、投資家から資金を集め、今までできなかった取り組みが行えるようになっています。

 

今回は、このソーシャルインパクトボンドについて、その歴史や仕組み、メリットなどを紹介していきます。

 

 

ソーシャルインパクトボンドとは?

ソーシャルインパクトボンドとは、官民連携の新しい取り組みの一つです。

 

政府や自治体が施工業者にサービスを依頼するのではなく、資金提供者を募って、業務を委託し、政府や自治体は、成果に対して報酬を支払います。

 

これにより今までなかなか取り組む事ができなかった、利益に繋がりづらい社会的課題解決に対しても効果を発揮することが可能となりました。

 

資金を提供する投資家にとっても、現在拡大している環境や社会問題の解決に向けて投資を行うESG投資の一つとしても注目を集めています。

 

ESG投資における、サステナビリティリンクボンドやグリーンボンドについては、こちらのコラムで紹介しています。

ぜひあわせてご確認ください。

サステナビリティリンクボンドとは?メリットや事例についても解説

グリーンボンドとは?わかりやすくメリットやデメリットも解説

 

ソーシャルインパクトボンドの歴史

ソーシャルインパクトボンドは、2010年に世界で初めてイギリスのピーターバラにおける再犯防止・受刑者社会復帰を目的として始まりました。

 

2012年8月には、米国で初めてニューヨーク市の再犯防止・受刑者の社会復帰政策として採用されています。

 

その後、2013年6月には、 当時のイギリスのキャメロン首相の呼びかけで、インパクト投資をグローバルに推進することを目的としたG8インパクト投資タスクフォースが創設されたことで、世界各国に拡大するきっかけとなったのです。

 

7月にオーストラリア、9月にドイツ、12月にオランダ、2014年にはベルギー・カナダ、2015年にはポルトガルなど世界各地でソーシャルインパクトボンドの案件が開始されています。

 

日本では2015年4月に初めて神奈川県横須賀市におけるパイロット事業として開始。

その後、日本でも地方公共団体による取り組みが続いています。

 

 

ソーシャルインパクトボンドの仕組み(スキーム)とは?

ソーシャルインパクトボンド

通常行政サービスは、サービス提供者と業務委託契約を結び、サービスの成果に関わらず、サービスを実施した業者に対して、決まった金額が支払われます。

 

これに対して、ソーシャルインパクトボンドは、提供するサービスの成果に応じて成果報酬を支払う仕組みを構築しているのが特徴です。

 

このようなサービスは、サービスを提供してから成果が出るまでに時間がかかることが多く、サービスを提供する企業やNPOなどは十分な資金が無いことが多く見られます。

 

そこでソーシャルインパクトボンドでは、サービス提供者に対して、民間資金提供社から資金調達を行い、行政と事前に合意した成果目標を達成できれば、あとから行政が資金提供者へ成果に応じた報酬が支払われる仕組みとしています。

 

ソーシャルインパクトボンドを成功させるには、実施したサービスの成果に対する公平な評価が必要です。

 

そのため、第三者機関からなる評価組織を組み込む必要があります。

 

このような第三者機関による評価が組み込まれることによって、サービスに対する監視が強まり、コスト削減などが図られます。

 

さらに、事業を成功させることに対する各組織のインセンティブが生まれ、発注する地方自治体のコスト削減、サービス提供者のノウハウの蓄積、投資家の報酬などそれぞれにメリットが生まれる仕組みとなるのです。

 

 

ソーシャルインパクトボンドを行う意義・メリットも確認!

聴診器

地域の公共サービスの中でも、健康・医療・社会福祉分野では、単年度で改善効果が見られる事業は少なく、地方自治体の会計年度の壁にとらわれるとプロジェクトを進めることができません。

 

ソーシャルインパクトボンドでは、会計年度にとらわれず、長期的な成果を目標とした取り組みが可能。

公共事業にとって、長期的に取り組むための極めて有効な手段となります。

 

また、サービスの質が高まることもメリットの一つです。

高い成果を上げれば、その分、報酬やインセンティブが高くなるので、サービスや品質が高まることが期待できます。

 

このように、サービスを依頼する行政と受託するサービス提供者の間に、成果によって報酬が得られる資金提供者を挟むことで、お互いにメリットを出せる仕組みを構築しているのです。

 

 

ソーシャルインパクトボンドの事例も紹介

メリットの大きいソーシャルインパクトボンドですが、実際の現場ではどのような取り組みがされているのでしょうか?

 

海外や日本での取り組みを紹介していきます。

 

海外での取り組み

イギリスのロンドンでは、路上生活者に対する支援がソーシャルインパクトボンドで行われています。

 

ロンドン市議会と地方自治省が、イギリスの非営利団体や非政府系シンクタンクを通じて、ホームレスの地域分布や経験機関などの実態調査、支援サービスの使用状況や新たなニーズを調査しました。

 

そこで出た課題を基に、政府の公募で選ばれた慈善団体へサービス提供を依頼。

 

路上生活者831人に対して2012年11月から取り組みを行い、2014年9月に公表されたレポートでは、「住居への定住者数」と「有給の雇用者数」において目標を超える成果が見られています。

 

その他、外国人路上生活者の母国への再定住や職業訓練参加者数などの目標を設定した取り組みが行われました。

 

日本での取り組み

日本では、糖尿病の重症化予防事業(兵庫県神戸市)、大腸がん検診の受診率向上事業(東京都八王子市)、認知症予防事業(奈良県天理市)、健康ポイント利用促進事業(岡山県岡山市)など、健康、医療、介護分野での実績が多くなっています。

 

東京都八王子市の事例

東京都八王子市では、大腸がん受診率向上を目的として、民間事業者へソーシャルインパクトボンドを通じた取り組みが行われています。

 

民間事業者は、前年度の大腸がん未受診者の中から、過去6年分の大腸がん検診ならびに特定健診関連データ、レセプトデータを機械学習のアルゴリズムにより解析し、受診確率の高い層を抽出。

個別に精密検査への受診案内を出す際、大腸がん罹患リスクを抽出し、パーソナライズされた受診案内を作成しました。

 

これにより受診率は、目標の19%を超え、26.8%まで拡大しました。

さらに精密検査受診率も77%から82%まで増え、取り組みの成果が出ています。

 

 

ソーシャルインパクトボンドとは社会へ貢献できる投資

ソーシャルインパクトボンドは、行政サービスを民間に委託する際、成果報酬の制度を設けて、投資家より資金を調達する仕組みです。

 

これにより単年ごとの予算の消化を求められる行政サービスに対して、長期的な取り組みができることになったり、費用の削減が行えたりといったメリットが出せる仕組みです。

 

投資家にとっても、社会問題の解決に向けた取り組みで報酬を得られることや、最近求められているESG投資の一つとしても捉えられることで取り組みが拡大しています。

 

結果が出るまでには時間のかかる公共の投資ですが、社会課題の改善につながる取り組みとなりますので、投資先の選択肢として今後さらに拡大が期待されます。

 

アースコムでは、太陽光発電投資・環境事業投資をサポートしています。

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この記事を書いた人

堀口優人 マーケティング部

広報担当として、太陽光発電所の物件情報、節税や償却などの専門知識を発信。より良いサービスを提供できるよう市場調査にも注力している。

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