2022.02.05
ソーラーシェアリング導入の流れは?詳細や事例もわかりやすく解説!
株式会社アースコム 代表取締役の丸林です。
近年、世界でも日本でも増えているソーラーシェアリング。
しかしながら、まだ全体の数としては少ないため、身近に事例や情報が少なく、どのように導入すればよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、福島の耕作放棄地でのソーラーシェアリングの実績のあるアースコムが、導入や手続きの流れを簡単にご紹介します。
ソーラーシェアリングで作れる作物や、費用、長期的に続けていくためのポイントなどについても解説します。
目次
ソーラーシェアリングとは?導入の流れをご紹介
ソーラーシェアリングとは、営農型太陽光発電のことで、農地に2m以上の支柱を立て、その上にソーラーパネルを設置します。
農地で太陽光発電を行いながら、パネル下部では農業を行います。
農地という場所を共有、つまりシェアしているので、ソーラーシェアリングと呼びます。
農業収入と売電収入を得ることができるので、不安定な農業収入をカバーできる点が魅力です。
また、売電をせずに自家消費も可能。
近年、電気代・原油代は年々上昇傾向にあり、ビニルハウスなど、大量の電気を使う施設をお持ちの農家の、光熱費削減が期待できます。
台風や災害時の非常用電源としての役割も果たすため、地域の防災拠点としても有効に活用できると考えられています。
ソーラーシェアリングで作れる作物は多く、農林水産省が実例として公表しているものには、じゃがいも、大豆、水稲、麦、ブルーベリー、牧草、榊(さかき)、高麗人参、シキミ、みょうが、しょうが、茶などがあります。
その他、全国のソーラーシェアリングで見られる農作物の例としては、米、大麦、小麦、大豆、キャベツ、レタス、さつまいも、じゃがいも、さといも、明日葉、小松菜、イチゴ、ブルーベリー、みかん、ニンニク、落花生、大根、人参、茶、梨、牧草などがあります。
ソーラーシェアリングでは通常の太陽光発電とは違い、パネル下部の作物に適した日照量を確保しなければなりません。
農作物に当たる日光の量がどのくらい遮られるかを測る指標を「遮光率」と呼びますが、遮光率を計算したうえで、パネル同士の間隔を開けて設置する必要があります。
そのため、通常の太陽光発電よりもパネルが設置できる面積は狭くなります。
豪雪地帯や地盤がゆるい水田地帯は通常のパネルの設置は難しいですが、基礎や支柱の設計を地盤に合わせて強化し、支柱に使う素材も頑丈なものを選ぶなどすれば、どんな土地でもソーラーシェアリングは可能ですよ。
ソーラーシェアリングの導入の流れと必要な手続きは?
ソーラーシェアリングの導入の流れと、必要な手続きについてご紹介します。
手続きがたくさんあり煩雑と言われるソーラーシェアリングですが、シンプルに説明すると、必要な手続きは「太陽光発電事業を行うための手続き」と「農地の一時転用許可の手続き」の2つです。
そして、この2つの手続きの前にやっておきたいことが「農業委員会への事前相談」です。
農林水産省は「長期安定的に発電事業を行うため、地域の方々の理解を得ながら事業を進めていくことが重要」としており、地域特性に合った計画が必要となります。
まずは各地の農業委員会に事前相談をしましょう。
太陽光発電事業を行うための手続き
太陽光発電設備販売施工会社に現地調査を依頼します。
発電設備の仕様や概算見積りを出してもらい、融資が必要であればこの段階で金融機関へ相談を。
資金の目途が付いた段階で、販売施工会社に設備の設計を依頼。
太陽光発電で「FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)認定」を受けると、20年間、決まった価格で電力を買い取ってもらうことができます。
FIT認定の申請先は経済産業省です。
認定には発電設備の事業計画認定申請が必要なので、施工会社と事業計画の策定をします。
また、FIT認定を受けるためには、電力会社との接続契約締結の手続きも必要です。
電力会社との接続契約締結とは、簡単に言うと「発電した電気はこの電力会社が買い取りますよ」という証明のようなものです。
「事業計画」と「電力会社との接続契約締結」の二つの手続きをもって、国のFIT制度認定の申請ができます。
農地の一時転用許可の手続き
ソーラーパネルを支える支柱は農地に立てなければいけないため、支柱を設置する土地部分の農地の一時転用許可を農業委員会から受ける必要があります。
事前に、経済産業省の「事業計画認定の申請」及び電力会社との「電力受給契約の申込み」を行っておかなければなりませんが、手続きが完了していない場合は手続きの状況が分かる資料の提出をします。
ソーラーシェアリングはあくまでも農業主体なので、営農に支障が無いことを証明する書類の提出を求められます。
必要な書類の内容についてはこちらで詳しく解説しております。あわせてご覧ください。
ソーラーシェアリングの申請手続きを詳しく!営農計画書の内容も
ソーラーシェアリング導入費用の目安は?売電価格など費用面を解説
ソーラーシェアリングの導入費用は、支柱が高くなる分コストがかかりやすい傾向にあります。
さらに、遮光率を考慮する必要があるため、通常の太陽光発電よりも面積あたりの費用が高くなりやすいと言われています。
ただ、既存の農地を利用するため新たに土地を取得する必要が無く、土地代が浮くという点では必ずしも高いとは言えません。
また、農地は日当たりも良いので、発電効率が良いという点も魅力です。
導入費用の目安としては、北海道を除く都府県の一経営体あたりの経営耕地面積の平均2.17ha(約21,700㎡)(平成31年度、農林水産省調査)を例に考えてみましょう。
ソーラーシェアリングでは、ソーラーパネルが影をつくる面積として33%程度が推奨されています。
21,700㎡の農地なら、7,161㎡がソーラーパネルを設置できる農地面積ということになります。
ソーラーシェアリングでは10㎡の面積で0.5kWの発電が行えると言われているので、7,161㎡であれば、約358kWとなります。
太陽光発電の設置にかかる平均価格は1kWあたり200,000円と言われているので、358kW×200,000円=71,600,000円が初期費用となります。
次に、売電収入を計算してみましょう。
太陽光発電の売電収入では設備利用率を考慮します。
24時間365日、定格出力で常に発電した場合が設備利用率100%です。
一般的に、10kW以上の太陽光発電所では設備利用率は約13%だと言われています。
設備利用率を使って発電できる時間を計算すると、24時間×365日×0.13=約1,139時間
250kW以上の太陽光発電所の売電価格は入札制度によって決まりますが、今回は2021年度の第10回入札の10.23円/kWを使いますと、358kW×1,139時間×10.23円=約4,171,405円が1年間の売電収入です。
FIT認定を受ければ20年間は同じ売電価格が保証されます。
なお、FIT認定終了後も、電力会社と新たな契約を結びなおせば売電は可能です。
その際、売電価格はFIT認定時よりも落ちることが予想されますが、国が主導している事業のため、その後の事業計画が破綻するおそれがあるほどの低価格になるとは考えにくいでしょう。
FIT認定期間中に売電先を変更することもできます。
SDGsの観点から、環境に配慮したクリーンなエネルギーを重視する電力会社に買い取りを希望されるケースも出てくるかもしれませんね。
自家活用ももちろん可能です。
農業設備に利用するほか、近隣にある関連施設や自宅の電力に使うこともできます。
ソーラーシェアリングを進めるポイントや導入の注意点、実際の事例は?
ソーラーシェアリングを進めるポイントは「地域との合意」です。
これは農林水産省も明言しています。
太陽光発電事業は大規模かつ長期的な運用になることから、地域の方々の合意は欠かせません。
実際の事例として、特に千葉県では自治体が主体となってソーラーシェアリング事業を進めており、地域全体で一丸となって取り組んでいることでソーラーシェアリングの機運も高まっています。
農林水産省が令和3(2021年)に公表したデータによると、日本での導入数は令和元(2019)年度までに 2,653件となってます。
数としてはまだ少ないものの、導入数・導入面積ともに年々増え続けています。
ソーラーシェアリングの導入は年々増えている
営農型太陽光発電とも呼ばれるソーラーシェアリングは、農業収入と売電収入のWインカム構造が作れる発電事業です。
導入の流れは「太陽光発電事業を行うための手続き」をしてから「農地の一時転用許可の手続き」。
ソーラーシェアリングはあくまでも農業が主体なので、ソーラーパネルを設置しても営農に問題が無いかが判断のポイントとなります。
ソーラーシェアリングの導入費用は、通常の太陽光発電に比べるとやや割高になる傾向にありますが、既存の農地を使うため土地代がかからないという点で導入費用を抑えることができます。
導入で大切なのは、地域の合意です。
大規模かつ長期的な運用になるため、地域の方の合意を得ることが大切です。
太陽光発電投資をサポートするアースコムでは、福島の耕作放棄地をソーラーシェアリングで活用!
新しい農業の形として注目を集めています。